先日、”つくる人になるための種まき”と題して、書籍『つくる人になるために』の刊行記念トークイベントを開催しました。
 往復書簡という形式でつくられた本の著者である、青木さんと光嶋さんにお越しいただき、本のこと、本を書くときや出すときに考えたこと、今考えていることなどお話をうかがいました。

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 以前からおふたりの著作を扱っていたこと、共通の知人がいたことなどでご縁が繋がった今回。
 お話をいただいたときはまだ本の発売前でしたが、これまでの著作やSNSでの発信などを拝見していて、お会いしたい、お話してみたいおふたりだったので、とてもうれしく、楽しみにしていました。
 また、本のタイトルにもなっている”つくる”ということはこりおり舎にとっても大切なキーワードのひとつでもあり、こりおり舎のお客さまに関心の高い人が多いテーマだと思っていました。

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 イベント前に届いた本を読み進めていくと、ここで語られる、”つくる”ということの定義の広さ、あいまいなゆるやかさを感じることになりました。トークの中で、このタイトルは最初にあったわけではなく、後からつけられたものだと知るのですが、おふたりにとっても大切なフレーズだったよう。

 最初はイベントで聞くことを考えるためにメモをしながら読んでいたのですが、だんだんと自分のためのメモになっていきました。気になるキーワード、ハッとすることば、気付き。メモしたいことが多過ぎて、読み終われないのではないか、と思ったほど。

 本を読んでわたしがメモしたのは、たとえば、 「心や体でも思考する」「非言語の思考」「ゆらぎ」「あわい」「余白」「つくることは壊すということ」「わからないを受け入れる」「他者への想像力」「現場に立つ」…といったこと。

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 頭や言語だけにとらわれない思考、曖昧さや不確かさを内包すること、それを自分にも他者にも許容すること、机上ではなく現場に触れ考えること…おふたりのやりとりの中で深まっていく思考は、この本自体にも生きているように思います。

 そして、まえがきで青木さんが触れられている、往復書簡という形式での言葉のやり取りが、生きる土壌を耕すような言葉の送り合いとしての意味を持つということ。
 それぞれのパスから引き出された言葉や思考でありながら、最初は双方に向かっていた矢印がだんだんと自身の内面に向かっていく様がとても興味深く、読んでいるわたし自身もだんだんと自分と本の中のお二人の対面ではなく、自身に向かう思考を感じながら読みました。

 往復書簡というかたちで、やりとりにタイムラグがあることで、これまでに青木さんが出されているラジオなどの対談をまとめた本ともまた異なる、ゆるやかに時間を内包した対話の面白さがあります。対話が生み出すもの、もこの本のキーのひとつだと思います。

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 トークイベントでは、この本が作られることになったきっかけや、紆余曲折、どのような編集を経て本の形になったのかなど、裏話もお聞きすることができました。本を作るということの大変さも感じるとともに、本を読んでいる中で感じたことの裏打ちをされたような思いでした。
 本を読んで参加された方の中には同じような印象を持たれた方もいらしたようです。

 パスとシュートと題しておふたりが全国各地で行ってきたトークは、こりおり舎で5回目。同じ本についてのトークイベントながら、決して同じ話にはならないそう。
 本を読む中で、聞きたいことやお話いただきたいことはたくさんあったのですが、質問を用意して答えてもらう、というのも面白みがない上に、話が盛り上がるとかえって用意したのにきけなかったことが気になるような気がしたので、読んでいる中でメモをしたキーワードだけを手に挑みました。
 本の中でも、現場で考えることやその場ならではの出会いや発見の面白さが説かれていたので、ここでもそういう場になればと思っていたのもあります。

 こりおり舎での会は、参加者があまり多くなく、少人数ならではのアットホームな場となりました。参加のきっかけも、こりおり舎を元々知ってくださっていて本のイベントなら、という方から光嶋さんのSNSを見たという建築士さん、青木さんの既刊で関心を持ったという福祉関係の方、青木さんのラジオ「オムライスラジオ」リスナーなどさまざま。
 お二人の巧みな話術で笑いの絶えない楽しい場でありながら、メモをしたいキーワードに溢れたお話が繰り広げられる、とても濃密な時間となりました。

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 ”つくること”と同時に大切なキーワードになったのが、”ことばにすること”。
 おふたりのことばのやりとりで生まれた本、ことばのやりとりで紡がれるトーク、そこには言葉にすることで見えてくるもの、輪郭がはっきりするものがあります。と同時に、言葉で括ってしまうこと、言葉で名付けた途端に定義づけられてしまうもの、といった言葉の持つ凶暴性、乱暴さ、のようなものにも話が広がりました。

 それでも言葉を通じて対話をすることで見えてくるものを見たい。お互いが見ているものを知りたい。そんなおふたりの想いを感じるようでした。

 あっという間に時間が過ぎてしまい、もっとこんなことも聞けばよかった、あんな話もしたらよかったと後から悔やみもしたのですが、これはまた次の機会を持ち、またお話できる場を作りなさいということだなと思うことにしました。

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 少しだけ残念に思うのは、こういった場に、島内からの参加がなかったこと(今治市内からの参加も1名だけでした)。松山や上島、広島など、車で数時間の距離の遠方からもお越しいただいたことはとてもうれしいのですが、島の人にもこういう場の価値を届けていけたらいいなと思っています。
 情報を届けること、価値を伝えること、もっとできることがあったのではないか。今回のお話は近くで暮らす人たちとも共有したいことが多く、島の人にも届けたかったな、とより感じました。

 こりおり舎でこういうイベントをやっていくこと、トークイベントなどに時間とお金をかけて参加すること、などそれこそ長い目で、種まきのように続けてく必要があると思っています。 


 実は予約をいただいた段階で、半数以上が私の友人知人だったこともあり、この人とこの人は知り合いだろうか?繋がったら面白いのでは?青木さん、光嶋さんにご紹介したい、という方が多くいらっしゃいました。
 トークの後の質疑の時間でそれぞれ自己紹介のような形になったこともあり、解散後にはわたしがお繋ぎするまでもなく、それぞれ交流が生まれていました。
 ここから何かが芽吹いたら面白いなぁ、なんて妄想しています。
 今回のイベントをきっかけにこりおり舎を知ってくださった方もいらして、とてもうれしく思いました。
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 お話自体ももちろん面白かったのですが、本も今回のトークも、内容そのものだけでなく、往復書簡というかたち、対談という形だからこそ生まれるものがあり、そういった対話の場を共有することで生まれる空気がありました。
 それは、おふたりがお互いを信頼し、尊重し、関心を持ち、対話をしているからなのではないかと思います。予定調和のような準備されたものはなく、わからないことや違うことは流さずに聞き、ずれていること、ピッタリと意見が合わないことも含めて話していく。本を読んだ時の印象と同じものをトークでの対話からも感じました。
 本を読んでいるときに感じた、だんだんとベクトルが自分の内部に向かっていく感覚を、今回のトークを聞いて、参加者のみなさんも感じたのではないかと思うのです。
 というのも、お二人のトークを終え、参加者の方から質問や感想をもらおうと思った時に、それぞれのみなさんがご自分のこと、悩んでいること、置かれている状況、などを吐露し始めたのです。プライベートな部分にも関わる自己開示をしてくださったのは、おふたりはもちろん、その場が、そういったものを受け止められる、寛容性を持った場になっていたからなのではないかと思います。

 これはまた新たな気づきで、このイベントがとてもいい場になったことはもちろんなのですが、こうした対話をきっかけに内面と向き合う場、自己開示をする場、それらを元に対話をする場の良さや重要性、必要性を感じました。
 つくりたい場が、またひとつ増えました。
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 こりおり舎ならではの場、時間になればいいなという思いで準備した今回のトークイベント。まさにそんな場になったのではないかと思っています。
 反省点はあるものの、わたし自身がとてもたのしい時間を過ごしたので、ご参加のみなさまにも楽しんでいただけていたらいいなぁと思います。
 翌日以降、このトークを聞いての後日トークをしたいといってくださる参加者の方もいらして、少なくとも、参加してくださったみなさまのこころの隅に種をまけたのではないかなと考えています。

 遠路はるばるお越しいただいた青木さん、光嶋さん、スペシャルゲスト神吉さん、そしてご参加いただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました!
またぜひお話する機会をつくりましょう!!


『つくる人になるために』はもちろん、お二人の既刊にもサインをいれていただきました!