こだわらないことにこだわる。

 先日取材いただいた記事の校正の際、気なって修正をお願いしたことがあったのですが、そこから考えたことを少し書いていきます。
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 修正をお願いしたのは、「個性的な独立書店が増えている」「棚を見るとこだわりがわかる」という流れから「こりおり舎ならではの本との出会いを届けたい」と表記されていた部分。

 それは、おそらくわたしが以前書いた「」で本の雑誌5月号の「独立系本屋一覧」にこりおり舎が掲載されたことと合わせ、行きたい個人書店がたくさん、と書いたことで出てきた表現で、間違いではありません。
 しかし、文脈的に「こりおり舎は棚に現れるようなこだわりの詰まった独立系書店」と読めなくもなく、それは何か違うぞ?と思ってしまったのです。
  こだわりがないとは言わないし、ここでしかできない出会いを届けたいと思うけれど、わたしの場合は、あまり主義主張が出ないように、こだわりが強すぎないように、ということの方にむしろこだわっていると言ってもいいくらい。
 どうしてそうしているか、は後でまた触れます。 


独立系書店ってなに??

 そもそも、独立(系)書店ってなんなのでしょう。
 独立系、というフレーズが使われ出したのは、ここ数年の気がします。2017〜18年頃、本屋Titleの辻山良雄さんが「本屋、はじめました」を、本屋B&Bの内沼晋太郎さんが「これからの本屋読本」を書いたことで、個人で本屋を営むノウハウが広がり、個人書店が増えたと言われています。
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 実際に個人書店が増え始めたのはTitleやB&Bなどがオープンし出した2010年代前半からで、それが2020年代に差し掛かる頃から一気に増えたという感じでしょうか。
 2013年冬に函館蔦屋書店をオープンさせるにあたり、同年夏〜秋に東京の大小様々な書店を巡った時には独立系書店という言葉を使っていませんでしたが、その時点で東京には結構な数の小規模書店がありました。
 曖昧な表現になってしまいますが、「独立系書店」は、チェーン店や大手書店ではない「個人(もしくは少人数)が運営する本屋」という感じでしょうか。大取次からの配本に頼らず(独立して)選書を行なっている書店を指すようです。
 その定義で言えば、大取次を使わず、配本に頼らず選書しているこりおり舎も独立書店(系ってつくとラーメン屋の系統みたいでなんか嫌なんですが)と言えます。
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こりおり舎が表現したいもの。

 こりおり舎は、「島の本屋」であることを大切にしています。
 個人的に言えば、店主の色の濃い、こだわりの詰まった書店が大好きです。店の作りから棚から思想が漂うようなお店に行くと楽しくて仕方がありません。東京で訪れた書店はもちろん、愛媛に移住してきてから訪れた広島や香川など近隣の書店も、小さなスペースにぎゅっと詰まった濃密な要素があり、とても魅力的でした。

 本屋を作るとなった時、わたしの好きなジャンル、すてきな本ばかり並んだ棚、最初はそんなものが詰まった店を考えました。わたしだけが楽しくても仕方ないので、こんなものを読んでほしい、こんな本に出会ってほしい、という本をちりばめつつ、こだわりを感じてもらえる店にしたいと思っていたのです。
 実際は、わたしがすきなジャンルの比率が高かったり、好みの著者や出版社の本の偏りがあったりはしますが、あまりこだわりや思想のない(わからない)店になっているのではないかなぁと思います。
 多くの人から譲り受けた古本を出来る限り並べたことで、想定よりも取り扱いジャンルが増え、読んだことのない著者の本も増えたことによるものです。そのため、よく言えば幅広く、はっきり言って雑多になり、古民家の雰囲気と部屋数がなんとなくごまかしてくれていたものの、最初はしっちゃかめっちゃかと言ってもいい状態でした。

 こだわる前に棚を埋めなければ!な時期↑(笑)

 だんだんと新刊の比率を増やしたり並べ方を工夫したりすることで、雑多な状態は少しずつ解消。それでも多ジャンルであまりこだわりなく置く、ということは引き続きやっています。なぜなら、お客さまから、「あまり主張が強すぎないから居心地がいい」と言っていただけたから。
 こだわりや思想が強ければ強いほど、人によってはそれを圧のように感じたり自分のための店ではないと感じたりし、お客さまを選ぶことになるのかもしれません。
 当初意図したものではありませんでしたが、島の本屋である以上、大事なことかもしれないと思い、今ではあえてこだわらないというこだわりを持っています。 
 とはいえ、こだわっている部分、 ひそませている毒はあるので、そういう部分がお好きな方はぜひ感じていただきたいし、そういう要素を少しずつ増やしていきたいなとも思っています。

「島の本屋」の役割。


 函館の店を作る時、作りたい「こだわりの生活提案型書店=セレクトで魅せる」と求められる「函館で一番大きい書店=ないものはないが通用しにくい」という相反する要素をどう消化するか、がオープン前もオープンしてからもずっと課題でした。
 小さな自分の店であれば、「求められるもの」をあまり気にしなくて良いかなと思っていましたが、島の人にも使ってもらいたい島唯一の「島の本屋」としての役割は、誰にとっても訪れやすく、自分のための本を見つけられる場所なのではないか、と思うようになりました。
 もちろんスペースにもわたしの選書力にも限りがありますが、ひらかれた場所でありたいなと考えています。

 本屋の役割やひらかれた場所作り、扱う本を選ぶことについてもまた書いていきたいなーと思います。




 
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