本屋の本の並べ方のこと、引き続き書いていきます!
前回は基礎〜こりおりの場合のことを書きました。今回は、お店を作る時にどうやって棚作り(売り場作り)をしたのか?ということについて、古巣の大型店の場合と比較しながら書いていきます。

 そもそも、店作りをするときにどうやって考えたのか?というと…

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 こんな感じにざっくりした図面を書いて、棚の配置とその棚にはいるジャンルを考えるところから始めました。
 めちゃくちゃざっくりです。結局ジャンルごとの本の量や棚の数などにより、この通りにはなっていませんが、だいたいの部屋ごとのジャンルはこの時の想定がもとになっています。 

 書店員さんの多くも、すでにある棚に入荷した本を並べたり、棚の本を返品したり、売り場の入れ替えをしたり、フェアをしたり、ということは経験していても、新店を一からつくる、という経験をされた方は少ないのではないでしょうか。
 わたしの場合、書店員としての経験は数年と短いのですが、新店の立ち上げに関わった経験が、こりおり舎をつくるときに生きています。
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 それが、わたしが古巣、と呼んでいる、函館蔦屋書店のこと。
 店の端から端までが100mを超え、担当の売り場だけでこりおり舎の蔵書数を遥かに超えるような大型書店であり、取次さんを通してシステム化された部分が多くあったので、まったく違うと言えば違う。けれど、売り場のコンセプトづくりからターゲット設定、棚の構成を考え、選書をし、棚詰をし、という経験を一通りしていたことは、小さな店を作る際に頼るべき指針となりました。(真似ることも、そうはしないと決めることも含めて)
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埋まらない夢をみたほどの棚。今でも写真を見るときゅっとなる。
 
 棚について言えば、函館蔦屋書店の場合は、
①棚が書かれた平面図(上から見た図)でどの棚にどのジャンルの本を並べるか決める
②側面図(横から見た図)で1スパン(縦1棚)の中でどの段にどの本が入るか決める(スポーツの棚であれば、野球は2段、サッカーは3段、というような感じで、細かい割り振りを決める。1棚目の下の段から2棚目の上の段へは跨がないようにする、などパズルに次ぐパズル…)
③高さが変動する棚であれば、ジャンルごとの本の高さを元に何段とれるか、厚さの平均値を元に1段の幅に何冊の本が入るか割り出す(一般的な書店は規定の棚幅が決まっていますが、古巣は棚の場所ごとに幅が変わるという鬼設定だったのでめちゃくちゃ大変だった)
という感じ。
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オープン当初の担当売り場。ちゃんと埋まったときはうれしいよりもほっとした…

 ある意味、ここでものすごく細かく設定したけれどその通りにはいかず売り場でやりくりすることもたくさんあったという経験が、紙の上で悩むよりやってしまえ、という教えになったのかも。
 こりおり舎の棚はありあわせのものや木箱を使っているので計算が立たない上、オープン在庫はほぼ古本でジャンルの偏りがあったので、計算のしようがなかったというのもあります。

 細かい棚の配分はもうあるものでできる形にするしかない、と思っていたので、特に大事にしたのは、導線です。
 入り口から入ってまず目にして欲しいもの、入りやすい空気を作るものを最初の部屋に、だんだん奥に行くにつれ、趣味が分かれるもの、じっくり見て欲しいものになっていくように。子ども向けの本の売り場は明るく、気軽に入れる場所に。文芸書の売り場は、じっくりそこで読めるように、本に囲まれる空間に。いちばん大切にしているくらしや料理や働き方の本はカウンターの近くのいいところに。
 そんなことを考えながら図面をなんどもぐりぐり書き換え、棚を並べては崩し、本を並べて、出来上がったのがオープン当初のこりおり舎です。
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 何度か来てくださっている方は、最初の頃はあまり代わり映えしなかったのが、ここ半年くらいはくるくる売り場が変わっているのに気づいてくださっているかもしれません。なるべく、1ヶ月に一度は入り口周りや真ん中〜カウンター周りの売り場は入れ替えたり組み換えたりしています。

  古巣時代、ベテランの書店員さんに棚は生き物だ、と教わりました。わたしが変えるだけでなく、お客様が触れること、交わることで育っていく棚の不思議。
 オープンしてからの棚の変化についてはまた今度、続きを書いていこうと思います!