おはようございます。


コーヒー・カフェ業界、飲食業界に身を置いていて、
昨日よりこのニュースを結構気にしている方は多いのではないでしょうか。


米カフェチェーン店、スターバックスのイタリア進出です。


そもそも、あれだけの世界的なチェーン(2015年時点、90の国・地域で22519店を展開)でありながら、
「イタリアにスターバックスって今まで無かったの?」


と、驚く方もおられるかもしれません。


たしかに今や日本国内では、少し街中に行けば珍しくもありません。


何年か前には最後の未進出県である鳥取県に出店して、
話題になりました。


それが、今さらイタリアには初出店だなんて。。


これにはさまざまな要因が考えられます。


コーヒー業界の端くれではありますが、少し考察してみました。



イタリアのコーヒー文化


イタリアでは「エスプレッソ」の形態でのコーヒーが主流です。


エスプレッソカップやデミタスカップなどの小さいサイズのカップで提供される、
高圧力で抽出された高濃度のコーヒーです。


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この「エスプレッソ」をベースとしたドリンクで馴染みが深いのは、
カプチーノやカフェラテでしょうか。


イタリア国内ではバール(BAR)という、
立ち飲みスタイルの小さなカフェが無数(約13万店舗)にあり、
エスプレッソが比較的安価(1杯90円~140円)に、しかも美味しく飲むことができます。


したがって、朝・昼・夕で1日に2~3回来店する人も珍しくありません。


そこまでイタリアの大衆文化に溶け込んでいる、エスプレッソ・バール文化。


この文化をアメリカに持ち込んだのが、
スターバックス元社長(現名誉会長)のハワード・シュルツです。


街中のバールの雰囲気、出てくるドリンクの品質、その場で生まれるコミュニティ、
それらに感銘を受けた経緯を自身で著書に述べています。


スターバックス成功物語
ハワード シュルツ
日経BP社
1998-04-23



そんなスターバックスがイタリアに進出するのに、
創業から30年以上かかったのは、
上で述べたイタリア独自のバール文化が大きいと考えられます。


約13万店舗あるとされるバールは、
その大多数が個人・家族経営規模の小さなお店です。
(2009年時点で事業従事者1名~9名の規模の飲食企業が95.2%を占めているとされている)


その中での価格優位性や品質、そして立ち飲みがメインというバールのスタイル。
立ち飲みをメインとすることで空間にコストをかけなくて済むため、
その分をドリンクの低価格に反映させることができるんですね。


このスタイルはスターバックスのコンセプト(豊かな空間、時間、サードプレイスの実現)とは、ギャップがあります。


また、スターバックスは以前にオーストラリアから撤退していますが、
この時も既に成熟していたオーストラリアのコーヒー市場・文化(エスプレッソが主流)に、
間隙が無かったという経験がありました。



イタリアの商習慣

上記とも関連してくるのですが、イタリアを含めヨーロッパ数か国では、
日本人の私たちからすると独特と思える商習慣があります。


日本では24時間営業のコンビニや、
深夜まで営業しているファミレスなどの飲食店は珍しくありません。
(最近では短縮への流れが進んでいるようですが)


しかし、ヨーロッパに行くと国によっては、
日曜日は観光地や空港以外の小売店はほとんど閉まっていたりします。
(ガソリンスタンドは営業していることもあるようです)


また、平日においても小売店は夜9時頃になると、
ほとんどが閉まってしまいます。


これは宗教的な理由や労働者の保護、小規模な店舗の保護などが
主な理由として挙げられます。


小規模な店舗の保護というのは、営業時間をある程度規制しないと、
資本力のある大規模な店舗が営業時間をどんどん延ばし、
小規模な店舗の売上機会を奪い、淘汰してしまうという懸念からです。


日本では2000年に廃止された、「大規模小売店舗法(大店法)」が、
似た役割を果たしてきたといえます。


イタリアでもそのような背景などにより、
外食産業におけるチェーン店は約20社ある中、
外資はスターバックスが進出するまではマクドナルドのみでした。


また、営業時間についても規制がされていましたが、
2012年に緩和されています。


ただ、緩和したからといって、すぐに商習慣や消費スタイルが変わることはなく、
一部では規制復活の声も根強く残っているとのこと。


また、イタリアでは主に国ではなく各地の自治体が、
飲食店の開店許可や営業の管理を行っており、
このやり方が外からの参入の障壁になっているともいえます。
(新規開店はライセンス制になっているため、かなりの時間と手続きが必要)



注目しているのはコーヒー・カフェ業界だけではない

と、スターバックスのイタリア進出に対して、
ネガティヴなことをつらつらと述べてきましたが、
今回の進出が成功するか、しないか、というのは、
コーヒー・カフェ業界だけではなく、おそらく飲食業界全体が注視しているのではないでしょうか。


というのも、すでに述べた通り、
イタリアにすでに進出している外資の外食産業はマクドナルドだけでした。


しかも以前までと比べて、営業規制は緩和されてきている。


他チェーンの企業も虎視眈々と機を狙っているような気がします。


スターバックスとしても、過去のオーストラリアでの経験も糧にし、
機は熟したとみて、このタイミングでの出店を図ったのでしょう。


店舗も通常の形態ではなく、スターバックス・リザーブ・ロースタリー(焙煎から抽出・提供まで行う高級業態)、
そして出店場所はミラノと、並々ならぬ気合を感じます。


まさに、スターバックスの今までの知識、経験、技術を総結集した、
という感じでしょうか。


当店とは別世界での話ですが、
同じ業界の端くれとして、今後の進展を楽しみにしたいと思います。


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【参考】
■日本貿易振興機構『イタリアにおけるサービス産業基礎調査』
■パリ産業情報センター『一般調査報告書 フランスにおける小売業の日曜・夜間営業の状況』

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